フルーツが暮らしに溶け込むふくしまぐらし

「福島って、どうしてこんなにたくさんの種類のフルーツが年中楽しめるんだろう?」

東京出身で福島に移住した私が抱いたその疑問の答えは、暮らしの中で少しずつ見えてきました。今回の記事では、私が福島に移住して感じた「フルーツが日常に溶け込むふくしまぐらしの魅力」について、お伝えしていきます。

かつて養蚕が盛んだった福島では、時代の流れとともに果樹栽培が広まり、良質な土壌と寒暖差の大きな気候が、さまざまなフルーツを育んでいます。

「例年より1週間早く桃の収穫が始まる」「会津みしらず柿 皇室へ献上」といったニュースが季節を知らせ、暮らしているとフルーツがこの土地の暮らしに深く根ざしていることを実感します。そんな福島でのフルーツとの関わりをご紹介します。

フルーツが暮らしに溶け込むふくしまぐらし

地域ごとに違うフルーツとの出会い

福島県は、気候や地形の違いによって「中通り」「会津」「浜通り」の3地域に分かれています。それぞれの地域で育つフルーツには、個性と物語があります。


中通り:盆地特有の気候が甘みを生む、福島県内最大の果樹産地

  • 収穫期を迎えた桃

県の中央に位置する中通りは、寒暖差の激しい盆地気候が特徴。四季を通してフルーツが楽しめる県内最大の果樹産地です。


福島市の桃・梨・ぶどうは、ふるさと納税の返礼品としても人気が高く、伊達市では冬になるとあんぽ柿を干すオレンジ色のカーテンが風物詩になります。桑折町で生産される桃は、「献上桃」として知られ、その品質には高い評価が寄せられています。


私は数年前に国見町が主催する「桃の木オーナー制度」に参加し、季節ごとに子どもたちと一緒に摘蕾・袋掛け・収穫までを体験しました。自分で育てた桃の味は格別で、家族や友人にも贈って喜ばれたことを覚えています。


  • オーナーとなった桃の木から自分の手で桃を収穫

また、私の暮らす福島市では、スーパーはもちろん、直売所や選果場、無人販売所、観光農園、さらにはフルーツを購入できる自販機まであり、フルーツと出会える場所や機会が、日常のあちこちに広がっています。

  • 福島市内のフルーツライン脇に設置されているりんごの自販機

王道のフルーツだけでなく、玉川村では、幻のフルーツとも呼ばれる「さるなし(ベビーキウイ)」を特産化する取り組みを進めています。村内の学校や保育施設などで地元産のさるなしジュースが振る舞われ、子どもたちに地元のフルーツへの親しみを育んでいます。

  • ほとんど市場に出回らない「さるなし」

会津:厳しい寒暖差が生む、歴史ある果樹栽培と地域ブランド

  • 会津みしらず柿

会津は内陸性で冬の寒さが厳しく、夏は暑い気候です。昼夜の寒暖差が大きく、この環境がフルーツの甘みを引き出します。清らかな水と恵まれた土壌に支えられ、古くから柿や梅など多彩なフルーツが栽培されてきました。

会津を代表するフルーツの一つが「会津みしらず柿」。室町時代には足利将軍への献上品として記録が残り、江戸時代には藩主が将軍に献上した際、「未だかかる美味なる柿を知らず」と賞賛されたことが名の由来とされています。現在も皇室への献上が続く、由緒ある果実です。焼酎による渋抜きを経て、上質なみずみずしさと、とろりとした甘みが生まれるのが特徴です。


浜通り:復興の象徴として広がる、果樹を軸とした地域再生の動き

  • 広野町のトロピカルフルーツミュージアムで栽培されているバナナ

太平洋側の温暖な気候を生かし、東日本大震災からの復興とともに新しい果実栽培に挑む浜通り。みかん、いちご、梨、パッションフルーツ、パパイヤなど多彩なフルーツが栽培されています。

その中でも注目なのが、広野町のバナナ「綺麗(きれい)」。震災で休止していた二ツ沼総合公園内の園芸ハウスを活用し、2018年から栽培が始まりました。復興の象徴として生まれたこのフルーツは、地域の新たな産業創出の核として期待されています。


品種に着目!季節で楽しむ福島のフルーツ

福島では、春はさくらんぼ、夏は桃、秋は梨やぶどう、冬はりんごやいちご…と、例年、6月頃から翌年5月頃まで、バトンをつなぐように旬のフルーツを味わうことができます。福島で生産されるフルーツは品種もさまざま。糖度や香り、食感の違いを食べ比べられるのも魅力のひとつです。特に桃は早生から晩生の品種まで約3か月ほど長い期間楽しむことができます。


福島で生産されるフルーツの代表的な品種

さくらんぼ…佐藤錦、紅秀峰 など

桃…はつひめ、ふくあかり、あかつき、まどか、川中島白桃、ゆうぞら など

梨…幸水、豊水、二十世紀、あきづき、新高 など

ぶどう…あづましずく、巨峰、高尾、シャインマスカット、ピオーネ など

りんご…つがる、陽光、王林、ふじ など

いちご…ふくはる香 ふくあや香 ゆうやけベリー、とちおとめ など


福島市では、毎年7月からフルーツに特化したキャンペーン「ピーチホリデイ」が開催され、市内のカフェやレストラン、ホテルまで、桃スイーツや桃メニュー、宿泊プランなど、桃づくしの楽しみが広がります。その取り組みの中で生まれた「ももまみれ図鑑」は、桃の品種を可愛らしく擬人化して紹介するユニークな取り組みです。

桃が15品種、りんごが4品種、擬人化されて紹介されており、品種ごとの個性を楽しく知ることができます。旬の移り変わりや生産者の工夫を知ることで、福島のフルーツ文化の奥深さを感じられますよ。


  • 品種擬人化 ももまみれ図鑑(写真提供:一般社団法人福島市観光コンベンション協会(DMO))

この図鑑は、JR福島駅2階の福島市観光案内所で配布中なので、案内所スタッフにお声かけくださいね。ピーチホリデイ特設サイトからもPDFをダウンロードすることもできますので、ぜひご覧になってみてください。


品種擬人化 ももまみれ図鑑


福島生まれのオリジナル品種を味わう

  • 2022年に登場したいちごの新品種「ゆうやけベリー」

福島県では、独自の研究によって多くのオリジナル品種が誕生しています。

例えば、桃の「黄貴妃」は、「ゆうぞら」から生まれた黄桃で、マンゴーのような芳香と甘みがあり、追熟するほど濃厚な味わいに。

ぶどうの「あづましずく」は、酸味が少なく甘みが強い大粒種で、皮離れのよい果肉が特徴です。

りんごの「会津のほっぺ」は、「ふじ」と「紅玉」を掛け合わせた香り高い中生種。

いちごの「ゆうやけベリー」は、橙赤色の果実と上品な甘さが魅力。寒さに強く、福島の冬の新しい味覚として人気を集めています。


こうして多彩な品種が生まれている背景には、日々研究と工夫を重ねる関係者や生産者のたゆまぬ努力があり、私たち消費者は四季折々のフルーツを楽しむことができます。感謝の気持ちを忘れずに、一つひとつのフルーツを大切に味わいたいですね。


おわりに

私が福島に移住して感じたのは、フルーツが「買うもの」ではなく、「暮らしの中に身近にあるもの」だということです。


友人や近所の方、夫の仕事の取引先などからおすそわけをいただく機会も多く、休日には子どもとフルーツ狩りに出かけたり、直売所で旬のフルーツを選んだりと、自然とフルーツが暮らしに溶け込んでいます。

フルーツの生産地・福島だからこそできる、貴重な体験がたくさんあります。移住を考える方には、ぜひこの「フルーツとともにある暮らし」を体験してほしいと思います。

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